あまり知られていないけど、抗がん剤投与したときにまず気を付けなきゃいけないのがアレルギー反応です。
世間では、副作用=吐き気、脱毛、便秘等が真っ先に挙げられますが、これらが出現するよりも前に起こります。
頻繁に起こることではありませんが、誰しもが起こりうるアレルギー症状です。

■目次
①アレルギー反応とは&メカニズム
アレルギー反応は、過敏症(かびんしょう)とも言います。
アレルギー反応・過敏症は、異物に対する生体防御システムが過剰あるいは不適応に反応することで起こります。
簡単に言うと、抗がん剤は人間の身体にとって異物なので、初めて投与したときに身体がびっくりして防衛反応が起きてしまう可能性があるということ。
②アレルギー・過敏症には、抗がん剤開始直後(急性)と24時間以降に起こる(遅発性)の2種類
急性:薬剤投与後早期に出現
抗がん剤の早期アレルギーは、5分以内に出現する可能性があると言われ、投与開始5~10分間は看護師が付き添ったりして反応を見ます。
遅発性:薬剤投与24時間~数日後に出現
一般的には、抗がん剤治療投与後24時間以内にアレルギー・過敏症は起こりやすいと言われています。
③アレルギー・過敏症が起こりやすい抗がん剤
一例ですが、アレルギー反応が起こりやすい抗がん剤の種類を挙げておきます。
アルファベット表記のものは、治療法(化学療法)の名前・レジメンです。
・タキソール(パクリタキセル)・・・CBDCA+PTX など
・ロイナーゼ(L-アスパラギナーゼ)
・ブレオマイシン・・・ABVD療法 など
・シスプラチン・・・CDDP+VP-16、CDDP+VNR、CDDP+GEM、CDDP+CPT-11 など
・カルボプラチン・・・CBDCA+VP-16、CBDCA+Pem、CBDCA+GEM、CBDCA+DOC、CBDCA+PTX など
・メトトレキサート・・・HDーMTX
・キロサイド・・・CHASER、CHASE
抗がん剤の種類は様々ですが、自分の投与予定の抗がん剤の種類が何かによって、起こりやすい副作用の特徴はあります。
それらを少しでも知ることができれば、早期発見・早期治療につなげることができます。
④アレルギー・過敏症の症状:痒み、蕁麻疹、ゼーゼーなどの呼吸器症状など
アレルギー・過敏症を軽度に抑えるためにも、前駆症状で気づくことが大切です!
前駆症状というのは、ある病気の起こる前兆 という意味なんですが、アレルギー反応は抗がん剤を投与してすぐに呼吸停止!といったことが起こるものではありません。
「なんかおかしいな」「いつもと違う感じ」などと前触れみたいなものはきっとあるはずです。
「おかしいな」と思ったら、必ず看護師や医師などの医療スタッフに言いましょう!
症状は個人差もありますが、一例として挙げます。
・掻痒感(そうようかん)・・・身体が急に痒くなってきた
・蕁麻疹(じんましん)・・・身体にボツボツがでてきた
・紅潮(こうちょう)・・・抗がん剤投与前に感じてなかった「ほてり感」がある、赤みがでてきた
・口腔内・咽頭不快感、くしゃみ、咳・・・口や喉がムズムズ痒いような違和感がある
・冷汗・・・冷や汗が出たり、急にぶるぶる寒気がする
・呼吸困難感・・・息苦しい、ゼーゼーする、息が上手く吸えない
・動悸・・・胸がバクバクしたりドキドキする
・しびれ・・・唇や指先などの抹消(体の部分の先端、端)がビリビリする
・脱力感・・・さっきまで動かせていた体に急に力が入らなくなる
・めまい・・・目が回るような感じや、物が揺らぐ感じがする
・悪心(おしん(吐き気))・・・気持ち悪くなり、吐きそう
・腹痛・・・お腹がキリキリ、キュルキュルなどと痛くなる
アレルギー反応は、 消化器系や呼吸器系、循環器系に出現するなど、人によって反応や出現時間など様々です。
看護師も患者さんの状態観察、バイタルサインのチェックを行い、それらの出現にいち早く気づけるよう努めます。
抗がん剤治療に対して、不安や恐怖を持っていて当然です。
「おかしいな」「なんか変だな」と思ったら、些細なことでも言ってもいいんです!
「こんなこと思い過ごしかな?」とか思わなくても大丈夫。
早期発見して早期対応することが、重症化させない最善の方法です。
また、次の治療のときに、この患者さんはこういう症状が出ていたから、「この薬を投与して予防しよう、看護師の観察回数を増やそう」などと次回の治療のデータ(参考)・対策に繋がるのです。
⑤アレルギー・過敏症の予防と対策・治療
★予防的なステロイド剤の投与
発生頻度の高いがん化学療法薬に対して、投与する流れの一つとして組み込まれています。
もしくは、一度アレルギー反応・過敏症様の症状が出現した場合は、そのレジメン(抗がん剤コースみたいなもの)に追加してアレルギーの出現を軽くするステロイド剤を投与します。
治療は、医師の指示に従い、アレルギー・過敏症の出現した症状に適切な検査・処置・治療を行っていきます。
⑥アレルギー・過敏症が起きたら?
<軽微な過敏症>
1)投与を中止し、バイタルサイン(体温や血圧、脈など)測定と発現している症状を把握
2)医師に報告し、指示により対症療法
3)症状消失後、投与を再開・継続するかの指示を受ける。
→再開するときは速度をゆっくりにする場合もあります。
<アナフィラキシー(最も重篤な過敏症の状態)が疑われる場合>
1)直ちに投与を中止する。
2)発見者は患者のそばを離れない。
3)応援を依頼し、医師に知らせる。
4)バイタルサインのチェック、心電図モニターを開始
5)アナフィラキシーショックの場合は、救急蘇生(心臓マッサージや呼吸確保など)を行う
⑦アレルギー・過敏症についての私の体験談:一番多かったのは、痒みと蕁麻疹
今まで話してきて、あなたに不安や恐怖を増大させてしまっているかもしれません。
私の経験上ですが、アナフィラキシーほどのアレルギー反応は、そうそう出現するものではありません。
私が見てきた中で一番多かったのは、掻痒感と蕁麻疹です。
赤く腫れて盛り上がる感じのポツポツとした蕁麻疹が1,2個できるといった感じです。
ブツブツの湿疹できなくても、お腹や太もも、腕の内側など皮膚が薄くて柔らかいところが痒いということもあります。
あと、何人か患者さんでいたのは軽度の鼻水です。
たらーと垂れる感じではなく、なんとなくムズムズして、しゅんしゅんとすする感じ。
それらは一時的なもので、抗がん剤治療が終われば消失するようなものでした。
⑧自分の変化はあなたしか分からない。家族はリラックスして会話を。
自分の体調の変化は、眼に見えて分かるもの以外、抗がん剤治療している当事者であるあなたしか分かりません。
小さな変化をそのままにせず、「ちょっとした変化の情報も次の治療に活かされる」と思って、遠慮なく看護師に伝えてください。
家族の方で付き添われている場合は、抗がん剤投与してからの患者さんに変化がないか注意してあげてください。
身体が赤くなっていたり、蕁麻疹ができていても、患者さん本人が気づかないこともあります。
ほてったり、痒みがなければ、外見上の変化はなかなか本人は気づかないこともあります。
一緒にいるからこそ気づいてあげることができるのです。
あとは、普通に話してあげてください。
リラックスして普通に会話することが一番大切なことなんです。難しく考えなくていいんです。
「抗がん剤、始まったね」「どんな感じ?」
普通の他愛もない会話で十分です。
抗がん剤治療に慣れている人たちは、家族の話とかされて過ごされています。
患者さん、家族がリラックスできることが、不安の解消につながるので、ゆったりとした気持ちで臨んでください。
何かあったら、看護師・医師含め、多くのスタッフがいます。
家族の方も、抗がん剤治療となると気が張りますが、「私がなんとかしなきゃ!」とそんなに気負いしなくて大丈夫ですよ^^
アレルギー・過敏症まとめ
ありがたいことに、私は重症化するようなアレルギーに遭遇したことはありませんでした。
でも、消化器系、呼吸器系、循環器系、皮膚系など、アレルギー反応・過敏症の症状には個人差があります。
その人に何が出現するか分からないのも事実です。
もしかしたら、早期発見・対応ができたから重症化しなかっただけで、前駆症状(重症化する前のきっかけ)を見逃してしまったら、重症化していた可能性もあります。
そして、患者さん自身が、自分の異変に気が付いて教えてくれたことも、軽微な過敏症で済んだ最大の要因だと思います。
患者である あなたと看護師の日ごろからのコミュニケーション、大切にしていきたいですね。
治療に関すること以外にも、不安なことや心配なことは、遠慮することなく医療スタッフに表出して、もっと「あなた」と関わらせてくださいね。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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